東京大学大学院薬学系研究科
機能病態学教室

Neuropathology and Neuroscience

アルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症など
神経精神疾患の病態解明から治療・診断薬開発へ、
そして同時に新しい基礎研究分野を切り拓く

News & Topics

研究室について

私達は主に生化学と分子生物学を用いて、培養細胞と動物モデルの両面から分子・細胞病態研究を進め、新しい技術と新しい創薬標的を同定し、治療薬開発へつながる成果を世界に発信すると同時に、基礎生物学研究に新たな展開を与えることを目標としています。また産学との共同研究を積極的に進め、研究成果の社会実装を目指しています。

研究内容についてはResearch(2018.10.29更新)をご覧ください。また薬学部3年生向けの教室紹介スライドをAbout Usに掲載しています。

社会連携講座「脳神経疾患治療学」(講座担当:富田泰輔教授(兼務)、伊藤弦太特任講師)を2017年7月1日に開設し、バイオジェン・ジャパン株式会社との共同研究を開始しました。本研究科における最先端の学術的知見と、バイオジェンが培ってきた脳神経疾患治療法の研究開発技術を融合し、画期的な創薬研究に繋げることを目的として研究を進めています。

「キミの東大 高校生・受験生が東京大学をもっと知るためのサイト」に当教室の探訪記事が掲載されました。詳細はこちらを御覧覧ください。

篤志家の皆様へのご寄附のお願いについてはこちらを御覧ください。

2021.10.1

堀由起子講師が准教授に昇任しました!

2021.9.9

徐楽佳大学院生、長井ゆき大学院生、梶原陽太郎大学院生、伊藤弦太元特任講師による総説"The regulation of Rab GTPases by phosphorylation"がアクセプトされました!

2021.7.20

有機合成化学教室(金井求教授)との共同研究で進めている光酸素化触媒を用いた光認知症療法について、日経新聞 Nikkei Viewsに掲載されました。また同記事が日経新聞朝刊(2021.8.5版)に掲載されました。

2021.7.16

蔡哲夫元大学院生、畑野阿希元大学院生、金津邦彦元大学院生による論文"Histidine 131 in presenilin 1 is the pH-sensitive residue that causes the increase in Aβ42 level in acidic pH."が、2021年度日本生化学会JB論文賞をを受賞しました!

2021.7.15

株式会社HACARUSとの共同研究について、日経新聞に掲載されました。

2021.6.30

伊藤弦太先生がご異動のため退職されました。新天地でも多くの成果を挙げられることをラボメンバー一同、確信しています!

2021.6.16

株式会社HACARUS(ハカルス)とアルツハイマー病やパーキンソン病の治療法開発を目指す、AI創薬の共同研究を開始いたします。プレスリリースリリースはこちらです。

2021.6.8

バイオジェンおよびエーザイにより開発されてきた抗アミロイドβ抗体医薬AducanumabがFDAにアルツハイマー病治療薬として世界で初めて承認されました。多くの研究者、関係する皆様の努力の成果が実ったことに嬉しく思うと同時に、患者様やご家族に大きな福音となることを期待しています。また認知症に対する創薬研究の新しい第一歩でもあります。今後も当教室一同、革新的な創薬につながる研究を進めていきます!

2021.5.28

伊藤恭平大学院生、徐楽佳大学院生、伊藤弦太特任講師による論文"Detection of Substrate Phosphorylation of LRRK2 in Tissues and Cultured Cells"が出版されました。

2021.5.27

菊池一徳元大学院生による論文"GPR120 signaling controls amyloid-β degrading activity of matrix metalloproteinases"が公開されました!詳細はこちらを御覧ください。

2021.5.25

荒木美保大学院生、伊藤弦太特任講師による論文 "BORCS6 is involved in the enlargement of lung lamellar bodies in Lrrk2 knockout mice"が出版されました。詳細はこちらを御覧ください。

2021.5.16

邱詠玟さんが助教に就任しました。

2021.4.14

小澤柊太元大学院生、堀由起子講師による論文 "Photo-oxygenation by a biocompatible catalyst reduces amyloid-β levels in Alzheimer’s disease mice"が出版されました。本研究は当研究科有機合成化学教室相馬洋平グループリーダー、金井求教授、東京薬科大学谷口敦彦准教授、名古屋大学大学院創薬科学研究科横島聡教授、福山透特任教授との共同研究です。詳細はこちらを御覧ください。

2021.4.12

蔡哲夫元大学院生による論文"Sequential conformational changes in transmembrane domains of presenilin 1 in Aβ42 downregulation"が出版されました。

2021.4.1

2021年度、当教室に新たに6名の学生が増え、邱詠玟さんが特任助教として就任しました。新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めながら、神経変性疾患、精神疾患の理解につながる分子及び細胞病態研究、そして新しい基礎生物学の開拓を目指していきます。そして新たな治療モダリティの開発、予防法の創出に向けたリアルワールドデータの利活用などの取り組みを継続し、社会実装に向けていきたいと考えています。なお2020年度の出来事についてはこちらをご覧ください。

最近の研究から

2021年5月27日
新しい論文をJournal of Neuroscienceに発表しました

これまでの研究から、アミロイドβ(Aβ)代謝の破綻がアルツハイマー病(AD)の病態形成に影響を与えることが示されています。脳内Aβ代謝にはアストロサイトがAβ分解酵素を産生することで関与していますが、その詳細な制御メカニズムについては不明です。本研究では、ω3脂肪酸受容体であるGPR120のシグナルがアストロサイトのAβ分解活性を抑制することを見出しました。また、このメカニズムとして、GPR120シグナルがAβ分解酵素の1つであるMatrix metalloproteinase 14(MMP14)の活性を抑制することを明らかにしました。加えて、GPR120遮断薬の投与がADモデルマウス脳内のAβ量を顕著に減少させたことから、今後GPR120シグナルがADの新規創薬標的となることが期待されます。本研究成果は慶應義塾大学薬学部との共同研究として行われました。

2021年5月25日
新しい論文をHuman Molecular Geneticsに発表しました

Leucine-rich repeat kinase 2 (LRRK2)は家族性パーキンソン病の原因遺伝子として知られています。Lrrk2を欠損させたマウスの肺では層板小体と呼ばれるリソソーム関連オルガネラが肥大化することから、LRRK2は層板小体の形態や機能維持に関与することが示唆されています。しかし、その詳細な分子メカニズムは明らかでありません。本研究ではプロテオミクス解析により、野生型マウスとLrrk2欠損マウスの層板小体プロテオームを比較し、BORCS6がLRRK2の下流で層板小体の肥大化に関与することを明らかにしました。また、LRRK2-BORCS6経路が層板小体のエキソサイトーシスを制御することを示唆しました。本研究の成果は未だ明らかにされていない脳におけるLRRK2の機能解明につながることが期待されます。本研究成果はバイオジェン・ジャパンとの社会連携講座における共同研究成果です。

2021年4月14日
新しい論文をBrainに発表しました

アルツハイマー病(AD)の発症原因の一つとして、脳内にamyloid β peptide(Aβ)が凝集・蓄積することが挙げられます。我々はこれまで、東大薬有機合成化学教室の金井求教授、相馬洋平グループリーダーと共に、光刺激によって活性化される光酸素化触媒を開発し、Aβに対する選択的な酸素原子付加によって凝集を阻害する戦略を見出してきました。今回、ADモデルマウス脳内におけるAβの光酸素化に成功し、光酸素化による凝集抑制効果だけでなく、凝集Aβの分解・除去が亢進することを見出しました。また、光酸素化された凝集Aβの分解・除去機構に、脳内免疫担当細胞であるミクログリアが関与することも明らかにしました。AD患者脳由来のAβに対しても光酸素化が可能であることも見出しており、これらの研究成果は、今後、光酸素化触媒を用いたADに対する新規予防・治療戦略の提示に繋がることが期待されます。プレスリリースはこちら(英語版)こちら(日本語版)およびこちら(東大サイト)です。 紹介記事が日本の研究.com日刊工業新聞Med IT IechEurekAlert!Photonics.comScienceDailyFLORIDA News TimesIntresting Engineeering日経バイオテクに掲載されました。

2021年3月25日
新しい論文をScience Advancesに発表しました

アルツハイマー病(AD)発症の原因の一つとして、amyloid β peptide(Aβ)が異常に凝集してアミロイドを形成し、脳内に蓄積することが挙げられます。我々は、これまで東大薬有機合成化学教室の金井求教授、相馬洋平グループリーダーと共に、光によって活性化する光酸素化触媒を用いて、凝集したAβに対して酸素修飾を付加する手法を開発し、それによってAβの効率的な除去が可能であることを見出してきました。本研究では、この手法を治療法として応用するために、脳移行性の高い新たな触媒を開発し、触媒の静脈投与と頭蓋骨外からの光照射という非侵襲的な方法で、ADモデルマウス脳内の蓄積Aβに対して選択的に酸素を付加することに成功しました。この非侵襲的酸素化反応を長期間継続すると、ADモデルマウス脳内の蓄積Aβ量を減少できることも明らかにしました。この結果は、今後、画期的な新規AD治療法の創出に繋がることが期待されます。プレスリリースはこちらです。紹介記事が日本の研究.com日経バイオテクに掲載されました。

2020年9月1日
新しい論文をMolecular Autismに発表しました

Neuroliginはシナプスオーガナイザーとして知られる接着分子ファミリーであり、神経細胞間シナプスの形成や維持に関わっています。X染色体上に存在するNLGN4X遺伝子にコードされるNL4Xはヒト特異的なNeuroliginであり、自閉症患者や精神遅滞患者においてナンセンス変異が見いだされていることから、NL4Xによるシナプス形成能の低下がこれらの疾患発症メカニズムに関わることが示唆されています。一方、NLGN4X遺伝子上には様々なミスセンス変異も見いだされています。これらの変異がNL4Xの代謝と機能にどのような影響を及ぼすかについて体系的に解析し、小胞体におけるフォールディング異常を引き起こすタイプと、細胞表面膜上でのタンパク分解(シェディング)を亢進させるタイプの変異があることを見出しました。そしてそれぞれフォールディングを回復させる薬剤や、シェディング阻害剤によってNL4Xのシナプス形成能が回復することを見出し、自閉症や精神遅滞の治療における遺伝子型診断に基づいた精密医療の可能性を提示しました。本研究は当研究科産学連携共同研究室(塩野義)と、慶應大学医学部との共同研究で行われました。

2020年4月20日
新しい論文をFASEB Journalに発表しました

アルツハイマー病(AD)に特徴的な病理学的所見として、アミロイドβペプチド(Aβ)の異常な脳内蓄積が挙げられます。Aβは、前駆体タンパク質APPからβとγセクレターゼによって二段階の切断をうけ産生されます。Aβの凝集・蓄積はAD発症の最初期に生じ、続いて神経細胞内にタウの凝集・蓄積を引き起こして神経変性に至ることが示唆されています。しかしその最初期過程であるAβ産生に関する詳細なメカニズムは未だ明らかになっておらず、根本的治療法も確立されていません。本研究では、ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムを用いて、Aβ産生制御に関わる新規分子calcium and integrin-binding protein 1(CIB1)の同定とその産生制御メカニズムを明らかにしました。CIB1の欠損によりAβ産生が上昇しました。またCIB1発現量の減少は、γセクレターゼの総量には影響を与えない一方で、γセクレターゼの細胞表面膜の存在量を減少させました。当研究室の先行研究から、γセクレターゼの細胞内局在部位によってAβ産生量が変動することがわかっています。すなわち本研究は、CIB1発現量の減少によってγセクレターゼの内在化が亢進することでAβ産生が増加すると考えられます。さらに初期AD患者脳においてCIB1発現量の低下が認められました。このことは、初期に起きたCIB1の変容がAD発症に寄与することを示唆していると考えられます。 今後、このCIB1を標的とした新たなAD治療・予防戦略の提示、早期診断法の開発に繋がることが期待されます。本研究は新潟大学脳研究所との共同研究で行われました。プレスリリースはこちらこちらです。紹介記事が日本の研究.com日経新聞ウェブサイトQLife ProBioSpaceScienceDailyMedical XpressUsAgainstAlzheimer'sサイトCitizenSide(フランス語サイト)に掲載されました。

2019年12月9日
新しい論文をJournal of Biochemistryに発表しました

アルツハイマー病の発症に関与するアミロイドβタンパク質(Aβ)は細胞内の局在部位によって産生量が大きく異なり、特に凝集性や毒性の高いAβ42分子種はlate endosomeやlysosomeなど、低pH環境下で産生量が増加することが知られています。本研究では、Aβの産生を担う酵素、γセクレターゼに着目し、γセクレターゼの活性中心サブユニットプレセニリン1 (PS1)のH131残基がpHセンサーとして働いていることを見出しました。このことから、H131のプロトン化がPS1の構造変化を引き起こし、Aβ42の産生を増加させることが示唆されました。本研究室では以前、遺伝学的アルツハイマー病発症予防因子PICALMがコードするCALMタンパク質が、γセクレターゼの細胞内輸送に関わることを明らかにしています。本研究はPS1はCALMタンパク質がAβ42産生を抑制する上で治療ターゲットとなり得ることを支持する研究結果になります。

2019年10月23日
新しい論文をJournal of Neuroscienceに発表しました

γセクレターゼは膜内配列切断酵素であり、内部の活性中心ポアに基質を取り込んで切断を行います。γセクレターゼによって産生されるアミロイドβタンパク質(Aβ)の中でAβ42種の毒性や凝集性が最も高く、アルツハイマー病発症の原因タンパクとして考えられています。私たちはγセクレターゼの活性中心サブユニットプレセニリン1(PS1)の第3膜貫通領域(TMD3)周辺の活性中心ポアがAβ42産生変動に応じて変化し、特にAβ42産生が低下する時には活性中心ポアが広がることを明らかにしました。更に、この時TMD3の細胞質側が活性中心アスパラギン酸から離れるような動きをすることも発見しました。本成果は世界で初めてPS1のTMD3に着目した構造活性相関解析を行い、Aβ42の産生への関与を明らかにした研究です。

2019年4月26日
新しい論文をChemical Communicationsに発表しました

アルツハイマー病の特徴的な病理学的所見の一つに、タウタンパク質が異常なアミロイドを形成して細胞内に蓄積する神経原線維変化が挙げられます。このタウアミロイドの形成・蓄積とその病理の広がりが認知機能低下と相関することから、その阻害がアルツハイマー病治療戦略の一つと考えられています。これまで私たちは、東大薬学部有機合成化学教室(金井求教授)との共同研究により、アミロイドに対する選択的な酸素原子付加によって、さらなるアミロイド形成を阻害する戦略を見出し、光刺激によって活性化する光酸素化触媒を開発してきました。今回、より酸素化活性の高い新規光酸素化触媒を開発に成功し、in vitroの検討においてタウアミロイドに対して酸素化が可能であること、酸素化によりタウアミロイド形成が阻害されることを明らかにしました。加えて、培養細胞内にタウアミロイドの形成を誘導するモデルにおいても、酸素化によりタウアミロイド形成誘導能が減少することがわかり、タウアミロイドの広がりをも阻害する可能性が示唆されました。本研究成果は、光酸素化触媒を用いたアルツハイマー病に対する新規治療戦略の提示に繋がることが期待されます。プレスリリースはこちらです。紹介記事がUTokyo Focus学内広報2019年6月号(2019.6.28配布)に掲載されました。

2018年1月8日
新しい論文をEMBO Molecular Medicineに発表しました

近年、脳に存在する神経細胞以外の細胞のうち、その大部分を占めるグリア細胞の一つ、アストロサイトが、神経機能に対してさまざまな影響を及ぼしていることが注目を浴びています。しかしアルツハイマー病におけるアストロサイトの病的意義については不明な点が多く残されていました。今回、我々はアミロイドβを分解する新規酵素kallikrein-related peptidase 7(KLK7)を同定し、脳内ではアストロサイトが分泌していること、またアルツハイマー病患者脳ではその発現量が低下していること、さらに遺伝子をノックアウトしたモデルマウスにおいてはアミロイドの蓄積が亢進することを明らかにしました。加えて、アストロサイトにおけるグルタミン酸シグナルを抑制することでKLK7の発現量と分解活性を上昇させることができることを見出しました。本研究成果はこれまでにアルツハイマー病発症機構において注目されてこなかったアストロサイトを標的とすることで新規治療・予防薬の開発につながることが期待されます。本研究は東京大学大学院医学系研究科、第一三共株式会社、新潟大学脳研究所、理化学研究所脳科学総合研究センターとの共同研究で行われました。プレスリリースはこちら(東京大学)もしくはこちら(AMED)です。プレスリリースのPDFはこちらです。プレスリリースが日本の研究.comに紹介されました。日経新聞ウェブサイト(2018.1.8)、QLifePro医療ニュース(2018.1.11)、日経バイオテク(2018.1.16)に掲載されました。

2017年11月3日
新しい論文をJournal of Neuroscienceに発表しました

Aβの凝集性や毒性を規定するC末端長を選択的に短くする化合物であるγセクレターゼモジュレーター(γセクレターゼ制御薬、GSM)はアルツハイマー病治療・予防薬候補と考えられています。我々はこれまでにフェニルイミダゾール型GSMが活性中心サブユニットであるPresenilinの第一ループ領域に結合することを明らかとしていましたが、今回エーザイ社によって作成、開発されたGSMであるE2012もPresenilinの第一ループ領域を標的領域とすること、更にE2012の相互作用の結果、第一膜貫通領域(TMD1)の膜内位置が上向きに変化することを見出しました。TMD1の膜内位置はγセクレターゼ活性に大きな影響を与えることから(Takagi-Niidome et al., Biochemistry 2010)、GSMがγセクレターゼ活性化薬として機能していることが改めて示され、またGSMのもたらすコンフォメーション変化を世界で初めて明らかにすることができました。本研究はエーザイ株式会社との共同研究の成果です。プレスリリースが日本の研究.comに紹介されました。

2017年4月3日
新しい論文をJournal of Alzheimer Diseaseに発表しました

家族性アルツハイマー病原因分子Presenilinの機能構造解析から、第一膜貫通領域が基質認識に関わっていること、そして特に第88番目のプロリンがその機能に重要であることを報告していました。本論文において様々な遺伝子変異体を人工的に作出し解析する中で、P88L変異が最も強いAβ42産生効果を示すことを見出していましたが、同変異が20代でADを発症された患者様において同定されました。これまで、患者様において見出された遺伝子変異を元に研究を進められてきました。その方向性とは異なり、分子生物学的研究の中から同定された変異が患者様において見出されたことから、本成果はAD発症機構におけるPresenilinの機能解析研究に大きな裏付けを与えるものです。本研究は南カリフォルニア大学  John M. Ringman教授らとの共同研究の成果です。

2016年7月28日
新しい論文をHuman Molecular Geneticsに発表しました

私たちはこれまでに遺伝学的アルツハイマー病発症予防因子PICALMがコードするCALMタンパク質がアミロイドβタンパク質(Aβ)産生を担う酵素γセクレターゼの細胞内輸送および活性を制御することを明らかにしていました。今回、そのメカニズムについてさらに詳細に検討し、CALMのN末端側に存在するANTHドメインとPI(4,5)P2の結合がγセクレターゼ活性制御に重要であることを見出しました。またRare VariantであるI34M変異がPI(4,5)P2との結合を抑制し、Aβ42産生を低下することを発見し、この変異を持つ人はアルツハイマー病の発症が予防されている可能性を示唆しました。またモデルマウスを用いてCALM機能を半減させることでアミロイド蓄積を顕著に抑制することに成功しました。本成果は、遺伝学的予防因子CALMの部分的な機能抑制がAβ蓄積を抑制し画期的アルツハイマー治療となる可能性について、世界で初めて同定したものです。本研究は奈良女子大学大学院人間文化研究科 渡邊利雄教授、医学系研究科 岩坪威教授との共同研究の成果です。

2016年5月9日
新しい論文をHuman Molecular Geneticsに発表しました

遺伝学的アルツハイマー病発症リスク因子BIN1がアミロイドβタンパク質(Aβ)産生の第一段階目の切断を担う酵素BACE1の細胞内輸送および分解を制御することでAβ産生量を規定していることを明らかにしました。BIN1遺伝子の個々人の違いはアルツハイマー病発症リスクとしてApoEについて二番目に強い影響をもたらします。その遺伝子産物であるBIN1は細胞内小胞輸送に関わるアダプター分子であることが推測されていましたが、アルツハイマー病発症メカニズムにおける役割は不明でした。ノックアウトマウス由来神経細胞やRNAiなどを用い、BIN1タンパク質が細胞表面膜からエンドサイトーシスされたBACE1のエンドソームからリソソームへの輸送を制御していること、その結果エンドソームで生じるβ切断効率を変化させること、またBACE1と直接結合していることを明らかにしました。本成果は、遺伝学的なリスク因子として重要なBIN1がアルツハイマー発症機構においてAβ産生に及ぼす影響について、世界で初めて同定したものです。本研究は名古屋大学大学院創薬科学研究科 横島聡准教授、福山透教授、医学系研究科 辻省次教授、岩坪威教授、Lankenau Institute for Medical Research George C. Prendergast教授との共同研究の成果です。紹介記事がUTokyo Research(2016.9.29)へ掲載されました。

2016年4月4日
新しい論文をScientific Reportsに発表しました

Notchはリガンドによる活性化を受けた後、γセクレターゼによって切断を受けて産生される細胞質内領域が転写活性化因子として作用するタンパク分解依存性シグナル伝達機構で、発生・分化制御や幹細胞の維持などに関わっています。一方、成体の中枢神経系においてはNotchが神経可塑性や機能に関わっていることが示されていましたが、そのメカニズムは不明でした。我々は生化学および遺伝学を駆使し、Notchリガンドが神経細胞におけるシナプス小胞タンパクの発現量を上昇させプレシナプス形成を誘導していること、またその効果が興奮性シナプスにおいてのみ観察されることを見出しました。さらに興味深いことに、この現象はγセクレターゼ阻害薬では影響を受けず、cGMP依存性キナーゼPKG阻害薬によって抑制されました。これはNotchが分化の終了した神経細胞においてはγセクレターゼ非依存性の新しいシグナル経路を介してシナプス機能を制御していることを明らかにしたものです。本研究はUniversity of Kansas 西宗裕史准教授、東海大学医学部 穂積勝人准教授、遺伝学研究所 相賀裕美子教授、大阪大学医学部 原田彰宏教授、慶応大学医学部 柚崎通介教授、医学系研究科 岩坪威教授、University of Cincinnati Raphael Kopan教授との共同研究の成果です。

2016年1月27日
新しい論文をThe Journal of Neuroscienceに発表しました

Aβ産生酵素であるγセクレターゼの全体構造については、近年単粒子構造解析によって明らかとなってきました。その中でγセクレターゼが複数のコンフォメーションを取りうることが示され、基質を捕捉し切断を行う過程でダイナミックな構造変化を生じることが推測されています。しかしその詳細は未だ明らかではありません。今回私達は、γセクレターゼの活性中心のサブユニットであるプレセニリンの第四膜貫通領域が特にアルツハイマー病の原因物質であり、毒性の高いAβ42を多く産生する際に大きく構造を変化させていることをを示しました。本成果は、γセクレターゼが毒性分子を産生する特異的な構造変化を世界で初めて同定したものです。この成果に基づき、Aβ42産生のみを抑制する、副作用のないアルツハイマー病の治療薬開発につながることが期待されます。

2015年2月11日
新しい論文をThe Journal of Neuroscienceに発表しました

Aβを産生する酵素であるγセクレターゼは他のタンパク質も切断するはたらきがあるため、単純にγセクレターゼを阻害するだけでは副作用が引き起こされることが示されていました。またγセクレターゼがどのようにして基質を認識しているかは不明でした。今回私達は、γセクレターゼの活性中心のサブユニットであるプレセニリンの細胞外に面している第一ループ領域とカルボキシ末端が、箸のように協調的に基質の細胞外領域を補まえて、活性中心の構造に取り込んでいることを示しました。本成果は、γセクレターゼが基質の膜内配列を切断する上で基質を補まえる分子領域を世界で初めて同定したものです。この成果に基づき、Aβ産生のみを抑制する、副作用のないアルツハイマー病の治療薬開発につながることが期待されます。本研究は医学系研究科岩坪威教授、大阪大学大学院 佐藤毅講師との共同研究の成果です。紹介記事がUTokyo Research(2015.2.20)へ掲載されました。

2014年7月10日
新しい論文をProceedings of the National Academy of Sciencesに発表しました

低分子化合物が、どのようなメカニズムで薬理作用を発揮しているのか、またどの部位に結合しているかについての情報は、創薬におけるラショナルデザインに必須です。今回、私達はアルツハイマー症治療薬として開発されているフェニルイミダゾール型γセクレターゼ修飾薬が、γセクレターゼ活性を阻害するのではなく亢進させることでAβをさらに切断・分解し、結果的にAβ産生を低下させていることを明らかにしました。またその作用部位が、プレセニリンの細胞外領域によって構成されていることを見出しました。この相互作用様式の詳細をさらに明らかにすることにより、新たなアルツハイマー症治療薬のラショナルデザインにつながると期待されます。本研究は薬学系研究科横島聡元准教授、福山透元教授(現、名古屋大学大学院創薬科学研究科)、医学系研究科岩坪威教授、理化学研究所 横山茂之上席研究員、白水美香子部門長、篠田雄大研究員との共同研究の成果です。紹介記事がAlzforum(2014.7.11)、UTokyo Research (2014.7.23)、毎日新聞朝刊(2014.7.31)、医療介護CB news(2014.8.1)へ掲載されました。

2014年3月1日
新しい論文をNature Communicationsに発表しました

アルツハイマー病の発症予防因子CALM(カルム)タンパク質が、アミロイドβタンパク質産生酵素γセクレターゼの細胞内局在を制御していることを明らかにしました。この酵素の活性はpHによる影響を大きく受け、特に酸性環境下で凝集性の高いAβ42を多く産生することを見出しました。CALMをコードしているPICALM遺伝子近傍に存在する一塩基多型がアルツハイマー病発症リスクを13%低下させることが知られており、本研究成果から予防アレルを持つ人ではAβ42産生が抑制されて可能性が示唆されました。今後、CALMの機能のみを抑制する方法を明らかにすることにより、アルツハイマー病の予防法の開発につながる他、PICALM遺伝子多型によるリスク評価とテーラーメード医療につながることが期待されます。 本研究は奈良女子大学大学院人間文化研究科 渡邊利雄教授との共同研究の成果です。
本研究成果に関する東京大学のプレスリリース、本論文に関する日経バイオテク(14.3.1)朝日新聞デジタル(14.3.1)マイナビニュース(14.3.4)医療介護CBニュース(14.3.6)毎日新聞ウェブサイト(14.3.13)の報道については、それぞれリンク先をご覧ください。本研究成果については14.3.3付朝日新聞夕刊、14.3.13付毎日新聞朝刊に掲載されました。

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